インターネット文化塾(7)「検索エンジン」

日本でPCを買ってブラウザを立ち上げるとYahoo!のページが表示されます。Yahoo!は世界初の検索エンジンですが、インターネットの世界には、Yahoo!さえ無かった時代があります。ブラウザを立ち上げてもどこにもつながっていないので、利用者は行き先の正確なアドレスを入力しなければなりませんでした。今では考えられないことですが、当時では、相手の住所を知らなければ手紙を出せないのと同じで、別に不思議はありませんでした。

では、アドレスをどうやって知るかと言えば、それはパソコン雑誌でした。さまざまなサイトのアドレス集は雑誌の目玉のひとつで、アドレス欄に入力して何が表示されるのか待つ時間は、なかなかスリリングでした。
もうひとつの入手先は、サイトのリンク集。当時のサイトは必ずと言っていいほど、自分がよく行くサイトのアドレスを紹介していて、質の高いサイト集を設置したサイトはそれだけで人気でした。そうやってリンク集をたどって、サイトからサイトへ飛び回ることは「ネットサーフィン」と呼ばれ、気に入ったサイトに行き当たったときは、金鉱を発掘したような気持ちになりました。
当時のブラウザは、新しいサイトを別窓やタブで開けるほど力が無かったので、リンク先が表示されるまでじっと待ち、期待に反していた時は「戻る」ボタンを何回もクリックして戻るということをやっていました。戻りの表示も来たときと同じだけ時間をかけながら。しかもそれは、非常に費用がかかるダイヤルアップ接続でした。

そんな中で、大量のリンク情報をジャンルごとに分類して紹介するサイトが登場し、人気を博しました。それが「Yahoo!」です。Yahoo!はすぐに日本でもスタートし、ブラウザを立ち上げるとまず、検索エンジンが表示される、今日のスタイルが生まれました。
この時代は、サイトを作ったら自分でYahoo!に登録していました。登録直後は新着ということでどんなサイトでもそれなりの上位に表示されましたが、そのうち徐々に順位を下げていくのが普通でした。それに対して、検索結果一覧の中に、サイト名の横にサングラスのマークがついていて、いつまでも上位に表示されるものがありました。これが「Yahoo!クールサイト」で、担当者がチェックして、特に有用であるとか、面白い、デザインが優れているなどのサイトを選んで、マークをつけていました。
Yahoo!クールサイトになるのはすべてのサイト制作者の夢でした。制作者はすぐにサイト登録をせず、練りに練って内容を充実させてから、満を持して登録しましたが、選ばれるのはごくわずか、超難関でした。ただし、このクールサイトがサイト制作のレベルアップに大きく貢献しました。その後のさまざまなサイト制作ツールやスクリプトは、要するに簡単にクールサイトと同じものを作ることが目的だと言えます。

Yakoo!も今はサングラスをつけなくなりましたが、当時同じように人気だったYahoo!のサーファーたちのおすすめサイト集が今でも残っています。
オススメサイト
http://dir.yahoo.co.jp/Entertainment/Cool_Links/
もはや当時のような用を成しているとは思えないので、おそらく記念碑的なページだと思います。

やがてGoogleがサービス開始し、サイトの評価は人間の目ではなく、プログラムによって行われるようになりました。また、このころから検索エンジンの評価基準を逆用して、サイトの順位を上げるSEOが盛んになってきました。検索エンジンは、公共性や話題性の高いものを上位に表示し、しゃにむに上位に上がろうとする個人や企業サイトのSEO手法を次々に無効化し、ペナルティを課しました。
Yahoo!からGoogleに主役交代し、選考基準が人の目からプログラムに変わっても、検索エンジンのポリシーは、より有意義なサイトを紹介することにあります。そこで最近の検索エンジンは、個人の検索キーワードやサイト表示の履歴を記録し、利用者の国籍、性別、おおよその住所、年齢などの個人像を組み立て、それにあった情報を優先的に表示するようになって来ました。つまり、同じキーワードを検索しても、人によって表示結果が違うようになったわけです。これによってSEOは、効果を発揮しづらくなりましたが、利用者にとっても、検索結果にバイアスがかかることになって、検索エンジン初期のような、何がでるか分からない楽しさは失われることになりました。

カテゴリー: インターネット パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください