5月12日は、ナイチンゲール(Florence Nightingale 1850-1910)の誕生日。白衣の天使と呼ばれ、とても献身的な看護婦さんというイメージが先行している割に、本当の業績は案外知られていません。
クリミア戦争に従軍し、死者の多くが、怪我によるものではなく、病院の不衛生な環境によるものであることを、様々な統計資料を作成して報告。看護技術の近代化をもたらした人物で、イギリスでは統計学の先駆者とされています。現代的なマーケティングの先駆者とも言えるでしょう。
1854年にクリミア戦争が勃発すると、ナイチンゲールは、従軍看護婦として38人の女性スタッフを率いて、後方基地の病院へ着任。しかし、当時看護婦は専門技術者というより病人の召使と考えられており、さらに縦割り行政の弊害から、必要な物資が無かったり、軍医長の妨害にあったりと、思うような活動はできませんでした。そこで便所掃除から徐々に病院組織に食い込む一方、政府に報告書を送って、上層部からの圧力をかけさせるなどして、環境を改善し、犠牲者を減少させました。
また、善意に頼るボランティアには反対で、しっかりした予算が必要と考えていたそうで、体制づくりのためなら、自分が広告塔になることも厭わなかった一方、戦争が終わると英雄扱いされるのを嫌って、「スミス」という偽名でこっそりイギリスにもどったと言われています。
そういう事実を知って写真を見ると、白衣の天使というより、仕事ができる近代的なビジネスマンの顔に見えてきます。