鮎が棲む余市川。

余市には仕事で果樹園に行く。春はさくらんぼ、秋にはリンゴ狩りに行ったりもする。僕の田舎の河川では6月の解禁から9月まで鮎釣りが盛んだが、北海道では珍しく余市川にも鮎がいる。鮎料理を出す水明閣にも行った事がある。余市と言えば「マッサン」ですっかり有名になったニッカ余市醸造所があるが、お酒を飲まない僕はニッカの工場見学はいつもパスしている。北陸の田舎の僕の家の隣は親戚の酒蔵でいつも酒の匂いがしていたが父も呑まなかった。大きな川に100mほどの長さの木造橋が架かっていて、その先の僕の父の弟のオジサンの家に遊びに行くと、大酒呑みのオジサンはいつも囲炉裏端の指定席で面白がって子供の僕にもお酒を呑ませ「男は酒が呑めなければ駄目なんだぞ」と酒飲み特有の常識論が口癖だった。帰りの夜道もその橋を渡るので、危ないと父に叱られた。そんな駄目なオジサンは鮎取りの名人だった。雨上がりの濁流の川で鮎が川下に下る習性を知っていて孟宗竹で組んだ大きな三角網を川底に差し入れて、急な流れに腰まで浸かって鮎漁をしていた。さすがにその時だけは真剣でシラフだった。鮎は清流に棲む。鮎がいる余市川を見ると、遠い記憶が蘇る。

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