WORDPRESSなどに頼らずサイトを作る方法もあります。HTMLという書式で、文字と画像を貼り付けながら、1ページずつ作るやりかたで、インターネット初期のサイトはすべてこの方法で作られていました。手間はかかりますが原理はシンプルなので、ウィルスなどの心配もありません。エディタさえあれば、特別なソフトなしでサイトを作れます。このようなサイト制作スタイルは、WORDPRESS等が登場した後も、長らくサイト制作の、もうひとつの主流派でした。
ところが、OSやブラウザが進歩するにつれて、制作したサイトが新旧のバージョンで見え方が違ってしまう問題が発生しました。同じサイズを指定しても、ブラウザによって文書や画像の枠が1ドットほど増減ができ、このため厳密なレイアウトをすると、全体が崩れてしまいました。
そこで、このような問題を解決するため、サイトをすべて表示する前に自動的に来場者のOSやブラウザのバージョンを読み取り、補正する小さなプログラムを組み込むようになりました。そんなふうにサイト表示に関する問題を解決するために、様々なプログラムを組みまなければならなくなり、せっかくシンプルで安全な手法が、あちこちにウィルスのつけこむ隙を作ってしまったのです。
決定的だったのは、スマホなどの普及です。スマホは画面が小さいので、PCを基準に作ったサイトをそのまま縮小表示すれば、文字が読めなくなります。もちろん拡大すれば良いのですが、相手がモバイルの場合、プログラムを使って、同じ原稿でモバイル専用のレイアウトを表示したほうが親切です。そして困ったことに、Googleが、そういう配慮のある「モバイル・フレンドリー」なサイトを優先すると宣言したのです。HTMLによる手作り派は、モバイルでも表示できる小さな画像と文章を、単純な縦積みにしたレイアウトに甘んじるか、全ページにさまざまなプログラムを組み入れなくてはならなくなりました。しかもそれまで一度作ったサイトは放っておいてもトラブルが起きなかったものを、組み込んだプログラムのセキュリティのため、バージョンアップに絶えず注意しなくてはならなくなりました。
WORDPRESSは、それらのプログラムが本体に最初から組み込まれていて、しかも頻繁にバージョンアップしてくれます。しかもサイト制作に使用した文章や画像は、データベースに整理されて保管されるので、再利用しやすくできています。これまでもWORDPRESSに似たサイト制作ツールはいろいろ登場し、中には廃れていったものもありますが、そこで作ったサイトはデータベースを使っていたため、WORDPRESSなどにそのまま引き継がれて生き延びてきました。ですから今後WORDPRESSが廃れて、何か別のものが主流になったとしても、そのまま新しい環境に移し替えてくれるツールが登場することは間違いありません。
WORDPRESSは無料のツールですが、世界中の無数のユーザーが絶えず問題をチェックし、即座に対応する体制ができています。高い技術を持った多数のエンジニアが24時間三交代でチェックと運営に当たるようなサイトでないかぎり、WORDPRESSを使ったサイトのほうが安全で効果的だといえます。