ワープロや表計算ソフトは、仕事に欠くことのできないものですが、時に罪作りな場合もあります。とりわけ「達人」の場合。テクニックの限りをつくして凝ったレイアウトの文章を作るのは結構なのですが、ファイルをネットで送った場合、受け取り側で同じように見えているという保証はありません。同じビジネスソフトを使っても、バージョンの違いやWIN版かMAC版かの違い、OSのバージョンの違いや、通過したサーバーの種類などによって、デザインが変わってしまうことがあります。凝ったことをすればするほどその可能性が高くなり、得意になって送ったファイルが、受け手側では、いつもおかしなレイアウトで送ってくる人、でかたずけられている場合もあります。
特にお役所には、こういう「達人」が多いようです。そんなのが担当部署内での標準仕様としてまかり通っていて、業者にも送信していたとしても、業者は「お上」のなさることには口出しできません。へんてこりんなデザインだと思っても、内容が伝わればわざわざ猫の首に鈴をつけに行ったりはしません。いつまでも達人は達人のまま、下手したら世代交代しても、その遺産が受け継がれたりします。
先日そんな例に出くわしました。達人は”親切にも”空欄を埋めるだけでいい文書ファイルを作成し、業者に送ったのですが、穴埋めして戻ってきたものはレイアウト崩れ。違う環境で開いただけのことですが、苦心の”離れ業”の化けの皮が剥がれてしまったのです。なのに達人は、「余計なことをしないで、空欄を埋めるだけでいいのだ」とご立腹です。
そもそもこれらのソフトは、自分のプリンタで打ち出すところまでは保証されてますが、ファイルをインターネットで送ることは想定されていません。また、インターネットのマナーとして、これらのファイルはそのままメールに添付してはいけないとされています。これらのファイル形式は、メールに添付された場合ウイルスの偽装であることも多く、例え知人からのメールであっても、本文中に「添付しました」という言葉がなければ、絶対に開いてはいけないものです。また、社内サーバーやPCによっては、そういう添付ファイルを削除したり、警告を出す場合もあります。
実際のところは、本文では時候の挨拶だけで、「添付した」の一言もなく、ビジネスソフトのファイルを添付してくる、というようなことがまかり通ってます。顧客やお役所からの場合、怪しいと思っても、結局開かざるを得ないかもしれません。日本は科学的常識よりも立場が先行する社会ですので、立場が上に行けば行くほど、こういうことに注意を払うのが強者のつとめ、というふうに思ってもらいたいものです。