今回の北海道大停電で、特に若い人たちから、コンビニが開いていて助かったというメッセージがSNSに書き込まれています。中でもセイコーマートが、停電中でも車から電源をとってレジを動かし買い物ができたこと、店内のイートインコーナーで温かいメニューが食べられたことに、感謝のメッセージが相次いでいました。
セイコーマートのPOSレジシステムは、他チェーンとは少々異なっていて、そのせいで車から電源をとっただけでレジが機能しました。他チェーンではレジは常時本部のサーバーと接続されていて、販売情報は即時に本部に送られます。本部ではリアルタイムの情報が手に入りますが、一方回線が切断されればレジそのものが動かなくなります。
これに対してセイコーマートのレジは、いわば1台のパソコンです。販売情報は一旦レジの中に蓄積され、一定時間ごとに本部からの呼び出しで販売情報が送信されます。このため常時接続されている必要がなく、車からでも電気が来れば、本部との通信ができてなくても販売ができます。そのためのケーブルが店舗に備えられていたそうです。
この「常時つながっていないパソコンレジ」のおかげで、セイコーマートでは他ではできないサービスも可能です。なかでも「セイコーマートクラブカード」は、登録された顧客が販売時に提示すると、会員特典やポイントが貯まるものですが、通常このタイプのカードは、店頭で申し込んでも一旦本部に情報が集められ、後日郵送されて来ますが、セイコーマートクラブカードは、申込時に店頭にあるカードのバーコートをスキャンし、申込書の情報を打ち込むだけでその場から有効になります。レジの中で、申込者の名前とバーコードを結びつければ登録は完了。お買い上げ情報と一緒にレジに蓄積しておき、あとからまとめて本部に送信されれば、発行まで何日も待たせる必要はないわけです。
また、買い物時にお店が必要なのはバーコード部分だけなので、通常のカードサイズのものの他に、小さなプラスチック片にバーコードだけ描かれた小さなストラップ状のカードもあります。バイクで北海道旅行の方は、最初のセイコーマートでクラブ会員に入会し、ツーリング中の買い物で使いながら持ち帰って記念にしているようです。
さらにカード紛失の際も、新しいカードを渡して、個人情報と新しいバーコードをレジに登録すれば、その瞬間から新カードに切り替わります。そして誰かに拾われたとしても、バーコードから読み取れるのは単なる記号なので、セキュリティ面でも優れています。
個人カードには磁気テープやICチップ内蔵などいくつか方法がありますが、バーコードが印刷されているだけでも、ほとんど同じ機能をもたせることができます。セイコーマートが、このようなコロンブスの卵的な顧客カードシステムを考え出せたのも、もともと卸売業が母胎なため、大量の商品のソーティングやピッキング作業で、バーコードの活用に慣れていたためだと言われています。
セイコーマートは、毎年のように顧客満足度日本一に選ばれていますが、その秘密は従業員の愛想の良さなどではなく、柔軟で店頭本意なレジ・ネットワークシステムにあります