高度成長からバブルへ、日本が発展を続けた時代は広告の黄金時代でした。我々広告業にとってだけではなく、クライアント企業にとってもそれは同じ。商品だけでなく、企業イメージを訴求する、ハイセンスで品格の高いイメージ広告を、競い合うように送り出していました。
また当時は、大手企業だけではなく地域の中堅企業も、できる範囲内でより良いイメージを訴求し、ブランドとしての確立を目指しました。当時の企業は、戦中・戦後の混乱した時代の中で、欧米企業に憧れ、同じようにブランド力を獲得することを夢見ていました。当時の企業はブランドの力を知り抜いていて、その確立が企業目標であったとさえ言えます。
近年日本では、優れたブランド訴求広告を見かけなくなりました。不況や消費者の意識変化のなかで、それだけの予算を組めなくなったというのは、やむを得ないことかもしれません。
一方で、消費者からの過酷なクレームやそれに対する過度の対応が、経営に大きなダメージを与えるようになってきました。企業がコンプライアンスを重視するのは当然として、万一の謝罪会見がどうあらねばならないか、ネットでの炎上を防ぐにはどうするかと言った、いわば「消費者に対する防衛」を考える企業も増えてきました。
これは何かが間違っています。自社ブランドのイメージ訴求をやめた企業に対して、消費者の判断は品質や価格、付帯サービスと言った、スペックで判断するしかなくなったのかもしれません。些細な過誤に対しても神経質に制裁を求め、二度と繰り返さないよう監視するしかないと考えているのかもしれません。
どんな時代にも過激なクレーマーは存在しましたが、一方で企業ブランドのファンも多く存在し、直接利害関係にない消費者は、企業の改善や成長に期待するだけの寛容さがありました。
商品開発から販売促進まで、スムーズ化とコスト削減を可能にするだけでなく、万一の事故やトラブルでも、最小限のコストで対応できる力、それがブランド力です。かつての成功を続けていた企業は、そのことを熟知していたように思えます。
現在欧米企業では、日本とは逆に、イメージ広告の出稿が激増しているといわれています。企業ブランドの重要性は、私たち地域企業でも同じ。まずは「北海道」という、強力なブランド・アドバンテージを、自社のブランド確立にどう生かすか。2015年は、多くの企業がそんなとこから考えてみる、ブランド元年になれば良いと思います。