ポイントカードやキャッシュカード、クレジットカードなどは、通常磁気テープ部分に名前やパスワードの情報が入っていて、リーダーを通して情報を読み込ませるのが普通です。また、中には磁気テープだけでなく、ICチップが埋め込んであり、購入履歴などのより大量のデータを保存できるものもあります。これらの情報は本部でなければ書き込むことができないので、申込用紙を送ったら、数日後に情報を書き込まれた形で書留で送られてきます。
ところが、北海道に本部を置くコンビニチェーン「セイコーマート」のお客様カードには、磁気部分がなく、バーコードが印刷してあるだけ。しかもその場でPOSレジスタに登録するだけで、使いはじめることができます。それでも買い上げポイントは確実に上積みされていき、本部には顧客の購入履歴が保存されます。磁気タイプのカードが他人の手に渡れば、リーダーを通してパスワードを読み取られてしまいますが、バーコードなら解読されてもわかるのは記号だけ。そしてすぐに店のPOSレジスタで新しいカードのバーコード情報と個人名を組み合わせて登録し、以前の情報を上書きするので、古いカードはどこにあろうと使えなくなります。
バーコード式は、カードの記号情報と所有者の名前、購入データは、本部のコンピュータに送られ、そこで初めてひとつになるので、デリケートな個人情報はカードの中にはありません。だからお店でも簡単に発行や再発行ができるのです。印刷コストも低いですし、発行の時間がかからない。また、ここのカードにはバーコードだけ部分だけ印刷した、携帯ストラップ式のミニカードもついてきて、北海道旅行をするライダーには必須アイテムとなっています。さしあたり、磁気でないことのデメリットはどこにもありません。
この冴えたアイデアは、思いつきの良さというより、全国に先駆けて、高度に情報化された物流センターを運営してきた経験から生まれたものです。商品は生産者のもとでバーコードが添付され、配送センター内の自動読み取りと自動コンベア・ソーティングシステムで、個店への配送品として小分けされて配送されます。そうやって店頭に並ぶまでバーコード情報を追跡する中で、効率化やジャストインタイム納品を実現してきた、システム運用実績の派生物です。現代では商品の価値は、物流ネットワーク・システムから生まれます。その重要拠点である配送センターを、安易にアウトソーシングするのではなく、自前で建設し運営してきたことが、新たな価値が生まれる母体になったとも言えます。